- 2026年9月20日
求人票の年収は高く見えたのに、毎月の手取りは思ったほど増えない。転職後、基本給は下がり、薬剤師手当の割合が増えた。そんな違和感は、給与を「年収」だけで比べると見落としやすくなります。
2025年の公的統計では、一般労働者の薬剤師の推計年収は566.8万円でした。 ただし、これは平均年齢40.1歳、勤続8.6年の集団平均です。新卒の見込み額でも、あなたの適正年収でもありません。[1][2]
この記事では年代別データを確認したあと、給与明細と求人票を同じ基準で比べる方法を説明します。
最新統計の「年収」はこう計算する
厚生労働省の賃金構造基本統計調査には、「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」が掲載されています。[1]
推計年収 = きまって支給する現金給与額 × 12か月 + 年間賞与その他特別給与額
2025年の薬剤師全体は、月39万8,700円、年間賞与88万3,500円でした。したがって、39.87万円×12+88.35万円=566.79万円、四捨五入して566.8万円です。
「きまって支給する現金給与額」には、基本給のほか毎月の手当や超過労働給与が含まれます。表の「所定内給与額」は36万9,700円なので、両者の差約2万9,000円が、平均上の超過労働給与に相当します。
薬剤師の年代別年収
次の表は2025年賃金構造基本統計調査の企業規模10人以上・男女計・一般労働者の値です。[1]
| 年齢階級 | 毎月の現金給与額 | 年間賞与等 | 推計年収 |
|---|---|---|---|
| 20~24歳 | 33.76万円 | 3.25万円 | 408.4万円 |
| 25~29歳 | 35.76万円 | 65.64万円 | 494.8万円 |
| 30~34歳 | 36.47万円 | 95.55万円 | 533.2万円 |
| 35~39歳 | 41.06万円 | 105.28万円 | 598.0万円 |
| 40~44歳 | 41.44万円 | 97.92万円 | 595.2万円 |
| 45~49歳 | 46.50万円 | 117.84万円 | 675.8万円 |
| 50~54歳 | 44.11万円 | 113.67万円 | 643.0万円 |
| 55~59歳 | 46.08万円 | 104.53万円 | 657.5万円 |
| 60~64歳 | 40.42万円 | 65.03万円 | 550.1万円 |
| 65~69歳 | 46.86万円 | 49.71万円 | 612.0万円 |
| 70歳以上 | 33.85万円 | 40.77万円 | 447.0万円 |
20~24歳の賞与が少ないのは、入社初年度で算定期間が短い人が含まれることなどが考えられます。65~69歳が60~64歳を上回るように、年齢とともに一直線に増える表ではありません。
この調査は同じ人を追跡したものではなく、その年に各年代で働いていた人の平均です。勤務先、管理職割合、勤続年数、地域、性別構成などが年代ごとに異なります。「40代になれば必ずこの額になる」とは読まないでください。
給与明細は「支給」「控除」「差引支給」の3つに分ける
| 区分 | 主な項目 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 支給 | 基本給、薬剤師手当、役職手当、住宅手当、通勤手当、残業・休日・深夜手当 | 固定部分と、勤務によって変わる部分を分ける |
| 控除 | 健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税、組合費など | 何の控除か、前月から変わった理由があるか確認する |
| 差引支給 | 支給合計-控除合計 | 口座への入金額と一致するか確認する |
手取りだけを見ると、基本給が低く手当が多い構成に気づきにくくなります。基本給は賞与、昇給、退職金の算定基礎になることがあるため、就業規則や賃金規程も確認します。
薬剤師手当は、基本給と分けて比べる
同じ月給35万円でも、基本給30万円+薬剤師手当5万円と、基本給24万円+薬剤師手当11万円では、賞与が「基本給の○か月分」の場合に差が出ます。
| 架空の例 | A薬局 | B薬局 |
|---|---|---|
| 基本給 | 30万円 | 24万円 |
| 薬剤師手当 | 5万円 | 11万円 |
| 固定月給 | 35万円 | 35万円 |
| 賞与が基本給4か月なら | 120万円 | 96万円 |
| 固定月給12か月+賞与 | 540万円 | 516万円 |
実際の賞与は業績、査定、在籍期間で変わります。この例は、月給が同じでも内訳で年収が変わることを示す計算です。求人票では「前年実績」なのか「保証月数」なのかも分けて確認しましょう。
残業代と固定残業代を確認する
給与明細では、残業時間と残業手当が勤務記録と合っているかを確認します。深夜、休日、時間外が別欄になっている場合は、それぞれの時間数も見ます。厚生労働省の給与明細モデルも、残業手当、休日出勤手当、深夜手当などの確認を促しています。[3]
求人票に固定残業代がある場合は、次の4点を確認します。
- 基本給と固定残業代が分けて記載されているか
- 固定残業代が何時間分か
- その時間を超えた分が追加支給されるか
- 実際の平均残業時間と、開局前後の準備時間がどう扱われるか
「年俸制だから残業代はない」と決めつけず、雇用契約書と労働時間の扱いを確認してください。
社会保険は基本給だけで決まらない
健康保険や厚生年金の保険料計算に使う標準報酬月額には、基本給だけでなく、役職手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当などの報酬が含まれます。[4]
そのため、基本給が変わっていなくても、固定手当や残業の変化、定時決定・随時改定などによって保険料が変わることがあります。協会けんぽの健康保険料率は都道府県支部で異なり、40~64歳では介護保険料も関係します。
所得税は毎月の給与から源泉徴収され、住民税は原則として前年の所得をもとに計算されます。新卒2年目や転職後に住民税が増え、手取りが減ったように見えることがあります。
賞与明細は「額面」と「査定の基礎」を見る
賞与は、定期給与とは別に支払われる給与で、所得税と社会保険料が差し引かれます。所得税は、原則として前月の社会保険料控除後給与と扶養親族等の数を使って算出率を決めます。[5]
確認したいのは、振込額だけではありません。
- 基本給の何か月分を基準にしたか
- 薬剤師手当や役職手当を算定基礎に含むか
- 個人評価と法人業績がどう反映されるか
- 入職・休職・時短勤務で按分されるか
- 前年実績と今回支給額の差は何か
転職時は、同じフォーマットに直して比べる
求人Aが「月給40万円・賞与なし」、求人Bが「月給32万円・賞与4か月」と書かれていても、Bの賞与がどの基本給に掛かるかで結果は変わります。
比較表には、基本給、固定手当、変動手当、固定残業代、想定残業時間、賞与算定基礎、退職金、年間休日、通勤・転居費を別々に記入します。最も低い場合、標準的な場合、最も高い場合の3通りで年収を試算すると、求人票の幅に振り回されにくくなります。
最後に確認するのは、年収の高さだけではありません。勤務時間、土日勤務、閉局後の残業、一人薬剤師の時間、異動範囲、教育体制を合わせて見ると、生活に合う給与か判断しやすくなります。