- 2026年9月12日
看護師に限らず、資産形成を考える際に候補となる制度の一つがNISAです。NISAは、一定の投資から得られる利益を非課税にする制度であり、投資そのものの損失を防ぐ制度ではありません。
看護師の年代別平均年収
厚生労働省「令和7年(2025年)賃金構造基本統計調査」の看護師データから、年齢別の年収の目安を計算しました。男女計・一般労働者・企業規模10人以上・産業計の数値です。
| 年齢区分 | 平均年収の目安(額面) |
|---|---|
| 20〜24歳 | 約440.1万円 |
| 25〜29歳 | 約501.5万円 |
| 30〜34歳 | 約490.5万円 |
| 35〜39歳 | 約518.9万円 |
| 40〜44歳 | 約548.4万円 |
| 45〜49歳 | 約561.2万円 |
| 50〜54歳 | 約577.7万円 |
| 55〜59歳 | 約573.5万円 |
| 60〜64歳 | 約502.9万円 |
| 65〜69歳 | 約424.1万円 |
| 70歳〜 | 約386.7万円 |
計算:月額の「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」。千円から万円へ換算し、小数第1位に丸めています。2025年6月の給与と、原則2024年1〜12月の賞与等を使った年収換算値です。
手取り額ではなく、税金・社会保険料控除前の額面です。短時間労働者は含みません。同じ人の昇給を追った統計ではないため、年齢に応じてこの年収になるとは限りません。NISAの積立額は平均年収ではなく、ご自身の手取り・生活費・支出予定をもとに検討しましょう。
出典:厚生労働省・令和7年賃金構造基本統計調査 第5表(男女計)/調査の概要
看護職であることによるNISAの特別な優遇・制限はありません。利用可否や枠は、原則として職種ではなく年齢・居住者等の要件により決まります。そのため、勤務先や働き方を問わず、制度の仕組みと自分の家計における位置付けを分けて確認することが重要です。
本記事では、個別の銘柄、投資信託、金融機関、投資額を推奨せず、現行NISAの基本と確認手順を解説します。
NISAとは:投資で得た利益を非課税にする制度
通常、株式や投資信託などの売却益や配当・分配金には税金がかかります。NISA口座で一定の条件のもと保有した商品から得られる利益は非課税となります。現行NISAは2024年に制度が抜本的に拡充され、非課税保有期間は無期限、制度は恒久化されました。つみたて投資枠と成長投資枠を併用できる点が特徴です。
NISA口座を開設できるのは、原則として口座を開設する年の1月1日時点で18歳以上の居住者等です。1人につき1口座であり、同じ年に複数の金融機関でNISA口座を持つことはできません。
ただし、「非課税」とは利益に対する税の扱いを指します。預金のような元本保証を意味するものではありません。投資する商品の価格は変動し、売却時に投資額を下回る、いわゆる元本割れとなる可能性があります。
つみたて投資枠と成長投資枠の違い
現行NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠があります。両者は投資できる金額や対象商品が異なりますが、どちらか一方だけを使うことも、併用することもできます。
つみたて投資枠
つみたて投資枠の年間投資上限額は120万円です。対象は、長期・積立・分散投資に適したものとして法令上の要件を満たし、金融庁へ届出がされた一定の投資信託などです。対象商品は固定ではないため、商品を検討する時点で金融庁の届出一覧や金融機関の取扱状況を確認してください。
成長投資枠
成長投資枠の年間投資上限額は240万円です。上場株式や投資信託などが対象となり得ますが、すべての商品が対象ではありません。制度上除外される商品もあるため、対象かどうかは注文前に確認が必要です。
出典:国税庁「No.1535 NISA制度」
年間投資枠と生涯の非課税保有限度額
つみたて投資枠と成長投資枠を併用した場合、年間投資上限額は合計360万円です。非課税保有限度額は生涯で総額1,800万円であり、このうち成長投資枠で利用できるのは1,200万円までです。つみたて投資枠だけで総額1,800万円を利用することは可能ですが、成長投資枠だけを利用する場合の上限は1,200万円です。
この上限額は「使い切るべき目標」ではありません。家計の余裕、近い将来の支出予定、値動きを受け入れられる範囲に照らし、利用しない選択や利用額を抑える選択もあり得ます。
売却すると枠はどうなるか
NISAで保有する商品を売却した場合、その商品の取得額(簿価)分の非課税保有限度額は、翌年以降に再利用できます。たとえば、売却時の価格ではなく、購入時の金額を基準に枠が復活する仕組みです。
ここで注意したいのは、売却した年の年間投資枠がその場で増えるわけではない点です。売却によって再利用できるのは翌年以降の生涯の非課税保有限度額であり、その年に投資できる年間枠を追加する制度ではありません。
また、非課税保有限度額は簿価残高、すなわち購入時の金額を基準に管理されます。値上がりしている商品を売却しても、復活する枠が売却額まで増えるわけではありません。
始める前に確認したい4つの手順
NISAは口座の種類であって、家計管理に代わるものではありません。金融庁は資産形成の基本として、収入と支出の把握、収支の黒字化、貯蓄を挙げています。投資を検討する前に、まず資金の目的と期限を整理します。
1.収入・支出と既存の貯蓄を把握する
まず、毎月・毎年の収入と支出、すでに保有している預貯金や負債を確認します。投資に回す資金を考える際は、「残った金額」だけでなく、今後必要になり得る支出も含めて検討します。
生活費、住居費、保険料、教育、介護、住宅修繕など、必要な資金の内容と時期は人により異なります。看護師という職種だけから、必要な生活防衛資金や適切な投資額を一律に決めることはできません。
2.使う予定が近い資金を分ける
近い時期に使うことが決まっている、または使う可能性が高いお金は、価格変動のある商品に投じた場合、必要な時に売却損が出ているおそれがあります。
金融商品には、安全性、収益性、流動性のすべてを満たすものはないとされています。目的と時期を整理し、値下がりした場合でも対応できる資金かを確認してください。
3.商品の値動きと費用を確認する
投資信託、株式などは商品ごとに値動きの要因、リスク、手数料・信託報酬等が異なります。商品名だけで判断せず、金融機関が交付する目論見書、重要情報シート、手数料の説明などを確認します。
つみたて投資枠の対象商品であっても、将来の収益や元本を保証するものではありません。対象商品であることと、自身の資金目的に適していることは別に判断する必要があります。
4.NISA以外の口座・制度との関係を確認する
すでに特定口座、一般口座、旧NISAの商品を保有している場合は、それぞれの税務上の扱いを混同しないようにします。旧制度で保有している商品を新NISAへ移す、いわゆるロールオーバーはできません。
税務や資産の移管に関する個別事情は、保有状況によって異なります。不明な場合は、利用する金融機関や税務の専門家に確認してください。
見落としやすいNISAの注意点
NISA口座の損失は、他口座の利益と相殺できない
NISA口座で生じた損失は、税務上ないものとみなされます。そのため、特定口座や一般口座で得た利益との損益通算はできず、損失の繰越控除もできません。非課税の利益という利点と対になる重要なルールです。
配当金の受取方法によっては非課税にならない場合がある
上場株式等の配当金をNISAで非課税とするには、金融商品取引業者等を経由して受け取るなど、所定の要件を満たす必要があります。保有する株式の配当金については、金融機関で指定されている受取方法を確認してください。
つみたて投資枠と成長投資枠を別の金融機関で使うことはできない
NISA口座は1人1口座です。つみたて投資枠を金融機関A、成長投資枠を金融機関Bというように分けて利用することはできません。金融機関の変更は年単位で可能ですが、手続きや取引状況に条件・期限があるため、変更を考える場合は早めに確認してください。
金融機関や商品を比較する際の確認項目
金融機関を選ぶ際は、ランキングやキャンペーンのみで決めず、以下を確認すると比較しやすくなります。
- 自分が検討する商品を取り扱っているか
- 積立設定、購入、売却などの操作方法が理解できるか
- 手数料、信託報酬などの費用を確認できるか
- 商品の説明資料、目論見書、重要情報シートを閲覧しやすいか
- 問い合わせ窓口、取引時の注意事項、変更手続きの案内が分かりやすいか
- つみたて投資枠の対象商品について、最新の届出状況を確認できるか
比較の目的は、特定の金融機関が万人にとって優れていると決めることではなく、自分が制度・商品・費用を確認し、継続して管理できる環境かを確かめることです。
NISAに関するよくある質問
Q. 看護師はNISAを利用できますか?
A. 看護師であること自体は、NISAの利用可否を左右する要件ではありません。原則として、その年の1月1日時点で18歳以上の居住者等であれば、NISA口座の開設対象です。個別の居住者該当性などは、金融機関や公的情報で確認してください。
Q. 年間360万円まで必ず投資しなければなりませんか?
A. いいえ。年間360万円は、つみたて投資枠と成長投資枠を併用した場合の上限額です。投資の義務や最低利用額を示すものではありません。年間上限額は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円です。
Q. 売却すれば、同じ年に枠を使い直せますか?
A. 同じ年の年間投資枠が売却直後に回復するわけではありません。売却した商品の取得額分の非課税保有限度額は、翌年以降に再利用できます。
Q. NISAで損失が出た場合、他の投資の利益と相殺できますか?
A. できません。NISA口座の損失は損益通算・繰越控除の対象外です。
まとめ:制度理解と家計上の目的を分けて確認する
NISAは、投資による利益を非課税にする制度です。つみたて投資枠は年120万円、成長投資枠は年240万円で、併用時の年間上限は360万円です。非課税保有限度額は総額1,800万円、うち成長投資枠は1,200万円で、非課税保有期間は無期限です。
一方で、投資には元本割れの可能性があり、NISA口座の損失は他口座の利益と相殺できません。制度上の枠があることと、投資を行うべきことは同義ではありません。
看護師向けの特別な制度として捉えるのではなく、まずは自分の収支、使用予定資金、資産の目的、価格変動への対応可能性を整理しましょう。具体的な商品の選択や税務上の判断に迷う場合は、金融機関の説明資料を確認したうえで、必要に応じて税理士などの専門家へ相談してください。