研修医から専攻医になると給料はいくら増える?年収差と所得税の負担率。白衣とエンジ色のスクラブを着た医師のイラスト。

研修医から専攻医になると給料はいくら増える?年収差と所得税の負担率

初期臨床研修を終えて専攻医になると、基本給が上がり、当直や外勤の選択肢も増えることがあります。一方で、勤務先によっては本務先の給与がほとんど増えず、当直回数や外勤で年収差が生まれるケースもあります。

公的統計の年齢階級で見ると、医師の推計年収は25〜29歳の757.2万円から30〜34歳の1,086.3万円へ、329.1万円、率にして43.5%高くなっています。 ただし、これは同じ医師を研修医から専攻医まで追跡した結果ではなく、各年齢層の勤務医をまとめた平均です。[1]

この記事では、初期研修医から専攻医へ移る際の収入を、基本給・当直・外勤に分けて考えます。所得税は2026年分の制度に基づくモデル計算を示しますが、実際の税額は社会保険料、扶養、保険料控除、寄附、住宅ローン控除などで変わります。

まず確認|専攻医とは何年目の医師?

専攻医は、初期臨床研修を修了し、基本領域の専門研修プログラムで研修する医師です。日本専門医機構の案内では、基本領域を決め、指導医のもとで3〜5年間の専門研修を行います。[2]

一般的には卒後3年目から専攻医になりますが、留学、休職、別の進路などにより時期は人によって異なります。「専攻医」という名称だけで給与体系が全国共通になるわけではありません。大学病院の医員、自治体病院の常勤医、民間病院の専攻医など、雇用区分によって待遇が変わります。

病院公式HPの例|初期研修2年目と卒後3年目を比べる

実際の募集条件で見ると、専攻医へ移る際に給与が上がる病院もあれば、移行直後はいったん下がる病院もあります。ここでは、初期研修医と専攻医の両方について公式ページで金額を公表している2病院を比較します。金額と条件は2026年9月20日に確認しました。

飯塚病院|移行直後は年換算38.4万円減、専攻医3年目は172.2万円増

飯塚病院の初期研修医の報酬年額は、1年次421.2万円、2年次528万円です。時間外手当20時間相当額と住宅手当を含み、平日夜間・休日勤務の手当は別途支給されます。[8]

同院の専攻医給与は、専攻医1年目が月40.8万円、2年目が月49.75万円、3年目が月58.35万円です。賞与を月々の給与に含む一方、院内待機、院外待機、救急車当番、超過労働等の手当は別に定められています。[9]

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飯塚病院での段階 公表給与 単純な年換算 初期研修2年目との差
初期研修1年目 月35.1万円 421.2万円 −106.8万円
初期研修2年目 月44万円 528万円 基準
専攻医1年目(卒後3年目) 月40.8万円 489.6万円 −38.4万円(−7.3%)
専攻医2年目(卒後4年目) 月49.75万円 597万円 +69万円(+13.1%)
専攻医3年目(卒後5年目) 月58.35万円 700.2万円 +172.2万円(+32.6%)

この例では、初期研修2年目から専攻医1年目へ移る時点の公表額は月3.2万円、年換算38.4万円下がります。専攻医2年目には初期研修2年目を上回り、専攻医3年目では年換算172.2万円高くなります。

ただし、初期研修医と専攻医では、含まれる時間外手当、住宅手当、賞与の扱いが同じではありません。待機・当番手当を加えた実際の総支給額を示す比較ではなく、公式ページの公表給与を12倍した比較です。連携施設で研修する期間は、研修先の待遇になる場合があることも公式ページに記載されています。[9]

JCHO大阪病院|基本給は初期研修2年目から卒後3年目で月6万5,076円増

JCHO大阪病院の2027年度初期臨床研修募集要項では、手当を除く月額給与は1年次28万9,536円、2年次30万4,384円で、賞与は年2回、各10万円です。[10]

同院の専攻医募集要項では、地域手当を含む月額給与が卒後3年次36万9,460円、4年次38万9,296円、5年次40万9,828円です。超過勤務、宿日直、通勤手当は別途で、賞与は病院規定により年2回とされています。[11]

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JCHO大阪病院での段階 公表された月額 直前段階との差
初期研修1年目 28万9,536円 ―
初期研修2年目 30万4,384円 +1万4,848円(+5.1%)
専攻医・卒後3年目 36万9,460円 +6万5,076円(+21.4%)
専攻医・卒後4年目 38万9,296円 +1万9,836円(+5.4%)
専攻医・卒後5年目 40万9,828円 +2万532円(+5.3%)

初期研修2年目から卒後3年目への増加は、月6万5,076円、率にして21.4%です。ただし、初期研修医の金額は手当を除く基本給部分、専攻医は地域手当を含む月額であり、賞与条件も同一ではありません。この表も総年収の完全な同条件比較ではなく、募集要項に掲載された月額の変化を示しています。

卒後10年目までの給与モデル

卒後1〜5年目は飯塚病院の公式ページに掲載された給与を年換算し、卒後6〜10年目は一つの給与モデルとして仮定を置きます。6年目以降の金額は、特定の病院が提示した給与ではありません。

モデルでは、卒後6年目に年収800万円となり、その後、役割や経験に伴って年80万〜100万円程度ずつ増え、卒後10年目に1,100万円になると仮定しました。卒後10年目前後は30〜34歳に該当する人が多いため、2025年賃金構造基本統計調査の30〜34歳医師の推計年収1,086.3万円も目安にしています。[1]

私の経験上でも10年目に1,000万円を超えるのが1つの目安と考えています。しかし、病院毎で大きく異なるので、給与で病院を選べば10年目より早い段階で1,000万円を超えることは可能です。

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卒後年数 想定する段階 額面年収 前年との差 数値の位置付け
1年目 初期研修医1年目 421.2万円 ― 飯塚病院の公表額
2年目 初期研修医2年目 528万円 +106.8万円 飯塚病院の公表額
3年目 専攻医1年目 489.6万円 −38.4万円 飯塚病院の月額を年換算
4年目 専攻医2年目 597万円 +107.4万円 飯塚病院の月額を年換算
5年目 専攻医3年目 700.2万円 +103.2万円 飯塚病院の月額を年換算
6年目 専門研修修了後の若手医師 800万円 +99.8万円 仮定
7年目 若手医師 880万円 +80万円 仮定
8年目 若手医師 950万円 +70万円 仮定
9年目 若手医師 1,020万円 +70万円 仮定
10年目 若手〜中堅医師 1,100万円 +80万円 仮定

このモデルの10年間の額面収入合計は7,486万円、単純平均は年748.6万円です。ただし、当直・外勤・時間外手当をどこまで含むか、大学病院か市中病院か、専門研修中に連携施設へ異動するかによって実際の推移は変わります。

同じモデルの所得税負担

前述と同じく、社会保険料控除を額面年収の15%と仮定し、配偶者・扶養、生命保険、iDeCo、寄附、医療費、住宅ローン等の控除がない場合の所得税等を試算します。住民税は含みません。

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卒後年数 額面年収 所得税等の概算 所得税等の負担率 仮定社保・所得税控除後(住民税前)
1年目 421.2万円 約8.6万円 約2.0% 約349.5万円
2年目 528万円 約13.7万円 約2.6% 約435.1万円
3年目 489.6万円 約11.1万円 約2.3% 約405.1万円
4年目 597万円 約18.2万円 約3.1% 約489.2万円
5年目 700.2万円 約27.4万円 約3.9% 約567.7万円
6年目 800万円 約42.7万円 約5.3% 約637.3万円
7年目 880万円 約56.6万円 約6.4% 約691.4万円
8年目 950万円 約68.8万円 約7.2% 約738.7万円
9年目 1,020万円 約80.9万円 約7.9% 約786.1万円
10年目 1,100万円 約94.8万円 約8.6% 約840.2万円

卒後5年目から10年目までに額面年収が399.8万円増えるモデルでは、所得税等は約27.4万円から約94.8万円へ、約67.4万円増えます。所得税等の実効負担率は約3.9%から約8.6%へ上がりますが、年収全体へ一律8.6%の税率が適用されているという意味ではありません。

公的統計では25〜29歳から30〜34歳で年収329.1万円増

2025年賃金構造基本統計調査の「企業規模10人以上・男女計・一般労働者・医師」から、毎月の現金給与額を12倍し、年間賞与等を加えた推計年収を比べます。[1]

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年齢階級 毎月の現金給与額 年間賞与等 推計年収
25〜29歳 61.52万円 18.92万円 757.2万円
30〜34歳 86.75万円 45.27万円 1,086.3万円
差 25.23万円 26.35万円 329.1万円

年収差329.1万円を25〜29歳の757.2万円で割ると、43.5%です。ただし、この差をそのまま「専攻医になった昇給額」と読むことはできません。

  • 25〜29歳には初期研修医以外の医師も含まれる
  • 30〜34歳には専攻医を修了した医師も含まれる
  • 同じ人を追跡した統計ではない
  • 勤務先、診療科、当直、外勤、勤務時間の構成が異なる
  • 複数の勤務先の給与を個人単位で合算した統計ではない

全国の傾向を知る参考値として使い、自分の見込み額は研修プログラムの募集要項と労働条件通知書から計算します。

大学病院では、専攻医になっても本務先給与が増えない例がある

文部科学省が厚生労働省の検討会へ提出した資料には、大学病院の職位別年収が掲載されています。資料中の専攻医・医員の年収は、国立大学病院418万円、公立大学病院328万円、私立大学病院378万円です。初期研修医は国立292万円、公立343万円とされています。[3]

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大学病院の区分 初期研修医 専攻医・医員 差
国立 292万円 418万円 +126万円(+43.2%)
公立 343万円 328万円 −15万円(−4.4%)
私立 資料に記載なし 378万円 比較不可

この表は同一人物の昇給を示すものではなく、資料上の平均年齢も初期研修医と専攻医・医員で異なります。国立と公立でも傾向が違うため、「専攻医になれば本務先の給与が必ず増える」とは言えません。

大学病院の専攻医は、関連病院の外勤や当直で総収入が増えることがあります。本務先年収と外勤込み年収を混ぜずに比較しましょう。

年収の増え方は3つに分けて計算する

専攻医になる前後の年収差は、次の式で分解できます。

年収差=本務先の固定給与の差+当直等の変動手当の差+外勤収入の差

次は計算方法を示す仮定です。相場や推奨回数ではありません。

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収入項目 初期研修医の仮定 専攻医の仮定 年間差
本務先の固定給与・賞与 500万円 600万円 +100万円
当直等 年収に含む 1回4万円×月3回×12か月=144万円 +144万円
外勤 0円 月8万円×12か月=96万円 +96万円
合計 500万円 840万円 +340万円

初期臨床研修中は診療のアルバイトが認められていません。[4] 専攻医になって外勤が可能かどうかは、研修プログラム、勤務先の就業規則、研修達成への影響、労働時間管理を確認する必要があります。

額面年収が340万円増えても、全額が手取りとして増えるわけではありません。所得税、住民税、社会保険料が増え、外勤先が複数なら確定申告が必要になることもあります。

所得税率20%でも、年収全体の20%を払うわけではない

所得税は、年収にそのまま税率を掛ける仕組みではありません。給与収入から給与所得控除を差し引き、さらに社会保険料控除や基礎控除などを引いた「課税所得」に、5〜45%の累進税率を適用します。[5]

たとえば課税所得が330万円を超えて20%の区分に入っても、課税所得の全額に20%がかかるわけではありません。速算表では、課税所得に20%を掛けて42万7,500円を差し引きます。[5]

ここで区別したい割合は2つです。

  • 限界税率:追加で増えた課税所得の一部に適用される税率
  • 実効負担率:年間の所得税等を額面年収で割った割合

収入が増えると限界税率が上がることはありますが、昇給したために手取りが減るという意味ではありません。

年収500万・750万・1,000万円の所得税モデル

2026年分の給与所得控除、基礎控除、所得税率を使い、所得税と復興特別所得税を概算します。[5][6] 比較しやすくするため、次の仮定を置きます。

  • 国内居住者、給与収入のみ
  • 配偶者・扶養親族なし
  • 社会保険料控除を額面年収の15%と仮定
  • 生命保険料、iDeCo、寄附、医療費、住宅ローン等の控除なし
  • 税額は概算し、万円未満を丸める

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額面年収 仮定した社会保険料控除 課税所得の概算 所得税等の概算 年収に対する負担率
500万円 75万円 213万円 約11.8万円 約2.4%
750万円 112.5万円 385.5万円 約35.1万円 約4.7%
1,000万円 150万円 593万円 約77.4万円 約7.7%

このモデルでは、年収500万円から750万円になると、額面は250万円増え、所得税等は約23.3万円増えます。所得税等の実効負担率は約2.4%から約4.7%へ、2.3ポイント上がります。

年収500万円から1,000万円では、所得税等は約65.6万円増え、実効負担率は約5.3ポイント上がります。社会保険料を年収の15%と置いた単純モデルなので、実際の保険料率、標準報酬月額の上限、加入する健康保険、賞与、年度途中の就職によって結果は変わります。

飯塚病院の公表給与を同じ条件で試算すると?

上と同じ税務上の仮定を、飯塚病院の公表給与の年換算額に当てはめます。待機・当番・超過労働等の追加手当は含めません。

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段階 年換算した給与 所得税等の概算 年収に対する負担率
初期研修2年目 528万円 約13.7万円 約2.6%
専攻医1年目 489.6万円 約11.1万円 約2.3%
専攻医3年目 700.2万円 約27.4万円 約3.9%

初期研修2年目から専攻医3年目では、年換算給与が172.2万円増え、所得税等はモデル上約13.7万円増えます。増えた給与に対する所得税等の増加割合は約8.0%です。住民税と社会保険料の増加はこの13.7万円に含まれません。

収入が増えた部分にどれだけ所得税がかかる?

上のモデルで、増えた所得税等を増えた額面年収で割ると次のようになります。

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年収の変化 額面の増加 所得税等の増加 増加額に対する所得税等の割合
500万円→750万円 250万円 約23.3万円 約9.3%
750万円→1,000万円 250万円 約42.3万円 約16.9%
500万円→1,000万円 500万円 約65.6万円 約13.1%

これは所得税等だけの割合です。住民税と社会保険料の増加は含みません。家計の手取りを試算するときは、翌年度の住民税も別に見込みます。

専攻医1年目は住民税の増加が遅れて来る

住民税は、原則として前年の所得を基に計算され、給与からの特別徴収は通常6月から翌年5月まで行われます。[7] 専攻医になった年に収入が増えると、その増加が翌年度の住民税に反映されます。

そのため、専攻医1年目の春に手取りが増えたように見えても、翌年6月から控除額が増える可能性があります。増えた収入をすべて固定費や投資へ回さず、源泉徴収票と翌年度の住民税決定通知書を確認するまで余裕を残します。

外勤先が複数ある場合は、主たる勤務先以外の給与が年末調整されないことがあります。国税庁は、2か所以上から給与を受ける人について、年末調整されなかった給与収入等が一定条件に該当する場合、確定申告が必要と案内しています。[5]

専攻医の募集要項で確認する項目

年収を比較するときは、次を同じ表に書きます。

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確認項目 見るポイント
固定給与 月給、賞与、固定残業代、昇給
当直・日直 必須回数、単価、年俸への内包、明け勤務
外勤 可否、紹介の有無、研修との両立、交通費
社会保険 本務先での加入、非常勤時の扱い
研修費 学会費、専門医試験、教材、交通・宿泊の補助
勤務時間 所定時間、時間外、当直、外勤先との通算
税務 源泉徴収票の発行、確定申告に必要な記録

本務先の年収が低くても、外勤を含めると総収入が高くなることがあります。しかし、外勤先への移動や勤務時間も増えます。収入だけでなく、症例経験、指導体制、専門医取得、休息を合わせて判断しましょう。

まとめ|「いくら増えるか」は内訳で考える

2025年の年齢階級別統計では、医師の推計年収は25〜29歳の757.2万円から30〜34歳の1,086.3万円へ329.1万円、43.5%高くなっています。ただし、専攻医への移行だけによる昇給額ではありません。

大学病院の資料でも、国立は初期研修医292万円から専攻医・医員418万円へ増える一方、公立は343万円から328万円で、区分平均では増えていません。自分の年収差は、本務先、当直、外勤を分けて計算する必要があります。

所得税の実効負担率は収入とともに上がりますが、税率が年収全体に一律でかかるわけではありません。給与明細、源泉徴収票、住民税通知書を使い、額面の増加と実際の手取りを毎年見直しましょう。

出典

この記事は私が書いたよ!

たっち | 医療者・会社員

たっち | 医療者・会社員

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