- 2026年9月20日
同じ医師でも、大学病院で働く人と市中病院で働く人、当直を多く担当する人と日中の診療が中心の人では、収入の成り立ちが違います。同期から聞いた「年収」に、外勤の給与まで含まれていたということもあるでしょう。
2025年の賃金構造基本統計調査から計算した医師の推計年収は1,512.3万円です。 ただし、平均年齢45.7歳の集団の値であり、研修医や若手医師の見込み年収を表す数字ではありません。[1][2]
この記事では、年代別の公的統計、主要な診療科別の過去の調査、給与明細の読み方を順番に整理します。自分の働き方と条件をそろえて比べることが、収入を考える第一歩です。
医師の平均年収1,512.3万円は、何を集計した数字?
使用するのは、2025年賃金構造基本統計調査の「企業規模10人以上・男女計・一般労働者・医師」の集計です。短時間労働者はこの表に含まれず、開業医の診療所経営による利益を調べたものでもありません。[1]
| 項目 | 医師全体の平均 |
|---|---|
| 年齢 | 45.7歳 |
| 勤続年数 | 7.8年 |
| きまって支給する現金給与額(月額) | 116.32万円 |
| うち所定内給与額(月額) | 102.77万円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 116.41万円 |
| 推計年収 | 1,512.3万円 |
推計年収は、116.32万円×12か月+116.41万円=1,512.25万円を四捨五入した値です。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」に掲載された値とも一致します。[1][2]
これは、毎月の給与を12倍して年間賞与等を足した推計です。調査対象月の給与と前年1年間の賞与等を組み合わせるため、同じ人の1月から12月までの入金を合計した実額とは異なります。[3]
また、事業所が回答する給与統計なので、ある医師が複数の病院から受け取った給与を個人単位で合算した「外勤込みの総年収」ではありません。自分の給与と比較する際も、まずは勤務先ごとに分けて考えましょう。
医師の年代別年収|2025年の公的統計
次の表も、企業規模10人以上・男女計・一般労働者の医師が対象です。すべて同じ式で推計し、金額は税金や社会保険料を引く前の額です。[1]
表は横にスクロールできます。
| 年齢階級 | 毎月の現金給与額 | 年間賞与等 | 推計年収 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 49.01万円 | 4.15万円 | 592.3万円 |
| 25〜29歳 | 61.52万円 | 18.92万円 | 757.2万円 |
| 30〜34歳 | 86.75万円 | 45.27万円 | 1,086.3万円 |
| 35〜39歳 | 111.98万円 | 125.98万円 | 1,469.7万円 |
| 40〜44歳 | 133.38万円 | 145.65万円 | 1,746.2万円 |
| 45〜49歳 | 128.67万円 | 159.36万円 | 1,703.4万円 |
| 50〜54歳 | 135.18万円 | 157.76万円 | 1,779.9万円 |
| 55〜59歳 | 143.23万円 | 170.40万円 | 1,889.2万円 |
| 60〜64歳 | 149.09万円 | 192.38万円 | 1,981.5万円 |
| 65〜69歳 | 143.71万円 | 94.39万円 | 1,818.9万円 |
| 70歳以上 | 124.84万円 | 91.48万円 | 1,589.6万円 |
年齢が上がるにつれて収入が増える区間はありますが、40〜44歳と45〜49歳のように、単純な右肩上がりにはなっていません。勤務先や職位、勤続年数、診療科などが違う人をまとめた平均だからです。
この表は、同じ医師を長年追跡した結果ではありません。「50代になれば必ずこの年収になる」「この平均より低ければ転職すべき」と判断するための表ではなく、自分の条件を調べる入口として使います。
なお、20〜24歳の区分を「研修医全体の平均」と読み替えることもできません。研修医の待遇を知りたい場合は、各病院の研修医募集要項を確認するほうが、自分の選択に直結します。
診療科別の年収|主要な科を同じ調査で比較する
「内科と外科ではどれくらい違うのか」「麻酔科や精神科はどうなのか」は、気になるところです。一方、上の賃金構造基本統計調査の職種「医師」は、診療科別に分かれていません。job tagの内科医・外科医のページに同じ年収が掲載されていても、それぞれの診療科だけを集計した値という意味ではありません。[1][2]
そこで、主要な診療科を同じ条件で見る参考資料として、労働政策研究・研修機構(JILPT)の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を使います。[4]
以下は2011年12月調査・2012年公表の過去データです。前年度の「主たる勤務先からの年収」であり、2025年や2026年の診療科別相場ではありません。外勤先からの収入を合算した数字でもありません。
調査は、全国の20床以上の病院に勤める24歳以上の医師モニターを対象としたインターネット調査です。有効回答は3,467人。下表の人数は、そのうち各診療科の年収集計に使われた回答数です。常勤だけに限定した表ではなく、年収集計全体は2,876人です。[4]
| 主たる勤務先の診療科(調査上の区分) | 平均年収 | 集計人数 |
|---|---|---|
| 内科 | 1,247.4万円 | 705人 |
| 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2万円 | 304人 |
| 外科 | 1,374.2万円 | 340人 |
| 整形外科 | 1,289.9万円 | 236人 |
| 脳神経外科 | 1,480.3万円 | 103人 |
| 小児科 | 1,220.5万円 | 169人 |
| 産科・婦人科 | 1,466.3万円 | 130人 |
| 精神科 | 1,230.2万円 | 218人 |
| 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7万円 | 313人 |
| 救急科 | 1,215.3万円 | 32人 |
| 麻酔科 | 1,335.2万円 | 128人 |
| 放射線科 | 1,103.3万円 | 95人 |
出典は報告書第Ⅰ部・図表5-17(本文30ページ)。年収0円・無回答を除く年収集計で、「その他」の診療科103人は上表から省略しています。[4]
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科は、原資料で1つの区分です。4科それぞれの平均が1,078.7万円という意味ではありません。 呼吸器科・消化器科・循環器科も同様に合算区分です。個別の金額を作って埋めず、調査の分類をそのまま示しています。
科ごとに年齢、職位、病院の種類、勤務時間が異なり、救急科のように集計人数が少ない区分もあります。現在の診療科選びや給与交渉に、この順位や差額をそのまま当てはめることはできません。
年収の違いは、診療科だけでは決まらない
自分の収入を比較するときは、診療科名のほかに次の条件をそろえると、違いを説明しやすくなります。
表は横にスクロールできます。
| 比較する条件 | 確認したいこと |
|---|---|
| 勤務先 | 大学病院、市中病院、クリニックのどこか |
| 年次・職位 | 卒後何年目か、専攻医・医員・管理職のどの立場か |
| 勤務量 | 週何日、何時間勤務か。時間外勤務はどれくらいか |
| 夜間・休日対応 | 当直、日当直、オンコールと呼び出しの回数 |
| 収入の範囲 | 本務先のみか、外勤・講演・執筆などを含むか |
| 生活面の支援 | 住宅補助、保育、学会費、交通費などの条件 |
たとえば、本務先だけで年収1,200万円の人と、本務先900万円に外勤300万円を足して1,200万円になる人では、同じ年収でも勤務先数や移動、休日の使い方が違う可能性があります。
これは比較方法を説明するための仮定で、実在する医師の事例ではありません。金額が同じでも、何にどれだけ時間を使って得た収入なのかまで見ることが大切です。
給与明細は「支給・控除・差引支給」で読む
毎月の入金額だけでは、基本給と当直料の内訳は分かりません。給与明細では、まず次の3つを分けて確認します。
表は横にスクロールできます。
| 区分 | 主な項目 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 支給 | 基本給、職務・役職手当、時間外手当、当直・休日手当、通勤手当など | 毎月固定の部分と、勤務実績によって変わる部分を分ける |
| 控除 | 健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税、その他の控除 | 自分に適用される項目と、前月から変わった理由を確認する |
| 差引支給 | 支給合計から控除合計を引いた額 | 振込額と一致するかを確認する |
「年俸に当直料を含む」「当直料は別途支給」では、追加で働いたときの収入の増え方が変わります。基本給が賞与や退職金の計算にどう使われるかも、勤務先の規程次第です。求人票だけで分からなければ、雇用契約書や給与規程まで確認しましょう。
また、税務上の「給与所得」は、給与の収入金額から給与所得控除を差し引いた金額です。「年収」「給与所得」「手取り」は同じ数字ではありません。[5]
本務先と外勤の収入を、1枚に整理してみる
自分の年収を把握する際は、源泉徴収票や給与明細を手元に置き、勤務先別に整理すると分かりやすくなります。源泉徴収票の「支払金額」は、給与収入を確認するための項目です。[6]
表は横にスクロールできます。
| 記入欄 | 整理する内容 |
|---|---|
| 本務先 | 年間の給与・賞与、当直料の内訳、週の勤務日数 |
| 外勤先A・Bなど | 各勤務先の年間給与、勤務回数、移動時間 |
| 講演・執筆など | 給与と区別し、支払元・金額・収入の種類を整理する |
| 家計に使えるお金 | 税金・社会保険料などを考慮した実際の手取り |
転職した年は、新しい勤務先の源泉徴収票に前職分が通算されていることがあります。前職の源泉徴収票と単純に足して二重計上しないよう、摘要欄も確認してください。[6]
まとめ|平均を知ったら、自分の勤務条件に戻る
2025年統計の医師の推計年収は1,512.3万円ですが、年代や勤務条件によって幅があります。診療科別の過去の調査も参考にはなるものの、現在の給与を保証する資料ではありません。
まずは本務先の給与、外勤、当直・オンコール、勤務日数を分けて整理しましょう。そのうえで、収入と同時に、専門性を磨く時間や家族との時間をどれだけ確保できるかを考えると、働き方を選びやすくなります。
勤務先ごとの具体的な給与例とバイトの報酬は、関連記事「大学病院・市中病院・クリニックで医師の年収はどう違う?外勤・バイトの相場も解説」で詳しく整理しています。